スマホが開けなかったら、家族は自分の契約や写真を見つけられるでしょうか。銀行の通帳や紙の契約書を整理していても、ネット銀行やサブスク、クラウドの写真は見落としがちです。
デジタル終活は、使っているサービスと残したいデータを整理し、必要なときに確認・手続きできるよう備えることです。最初から全アカウントを整理する必要はありません。まずは「料金がかかる契約」「お金に関する口座」「残したい写真」の3つを書き出してみましょう。
この記事では、終活ラボが提案する準備の順番と記入例を紹介します。本人が元気なうちに行う整理を中心に、家族が困らないための引き継ぎ方もまとめます。
デジタル終活とは?スマホの中にある契約と情報を整理すること
デジタル終活の対象には、スマホやパソコンのデータだけでなく、ネット銀行、ネット証券、有料アプリ、動画サービス、SNSなども含まれます。
国民生活センターには、故人のスマホを開けずネット銀行の契約先が分からない、サブスクの情報が分からず解約に困る、といった相談が寄せられています。紙の通知が届かない契約ほど、本人以外が気付きにくくなります。[1]
大切なのは、家族にすべての情報を見せることではありません。誰に何を残し、どの窓口で手続きするかを考え、必要な情報にたどり着ける状態を作ることです。
終活全体の準備は、終活は何から始める?準備チェックリストで確認できます。
最初に一覧にする5つの項目
1.スマホ・パソコンと、主に使うアカウント
使用中の端末、携帯電話会社、Apple AccountやGoogleアカウントの有無を整理します。メールアドレスは契約情報を探す手がかりにもなるため、どのメールを何に使っているかも確認しましょう。
記入例:「携帯電話はA社。普段のメールはBサービス。契約に関する通知は主にこちらに届く」。以下の記入例は、終活ラボが作成した架空のものです。
2.サブスクと継続課金
動画、音楽、電子書籍、有料アプリ、クラウド保存、セキュリティサービスなどを確認します。月払いだけでなく、年払いも対象です。
- サービス名と契約先
- 月払い・年払いなどの請求周期
- 分かる範囲の料金と次回更新日
- 支払方法と契約状況を確認する場所
- 解約方法を案内する公式ページ
スマホの定期購入一覧だけで、すべての契約が分かるとは限りません。事業者へ直接申し込んだ契約などもあるため、本人が確認できるうちに、メールやカード・口座の利用明細も照らし合わせましょう。
3.ネット銀行・証券・決済サービス
利用する金融機関や決済サービスの名前を書きます。口座番号などの詳細は、必要性と保管方法を考えてから記入してください。広く共有する一覧に、暗証番号まで載せる必要はありません。
記入例:「ネット銀行はC銀行、証券会社はD社を利用。取引内容の確認方法と書類は別途整理している」。残高を記す場合は、いつ確認した金額かも添えましょう。
4.写真・動画・連絡先など、残したいデータ
端末本体、クラウド、外付けの記録媒体のどこに保存しているかを確認します。残したい物だけでなく、共有する範囲も考えましょう。
記入例:「家族旅行の写真はEサービスのアルバムにまとめている。家族に残したい。仕事のデータは勤務先のルールに従って扱ってほしい」。
5.SNS・ブログ・ネットショップなど
自分で発信しているアカウントや、売上・問い合わせが発生するサービスも対象です。継続、停止、削除などの希望と、公式の手続きを確認します。
仕事や共同運営のアカウントは、自分だけの判断で家族へ引き継げるとは限りません。関係者や所属先との取り決めも整理してください。
デジタル終活を進める5つの手順
手順1.まずは契約を3件書き出す
最初は有料サービスを一つ、金融機関を一つ、写真の保存先を一つ書くだけでも構いません。分からない項目は「未確認」と残し、次に調べることをはっきりさせます。
ノートの項目に迷ったら、エンディングノートの書き方と記入例も使えます。何でも一冊に集めるより、共有する一覧と秘密情報の管理を分けて考える方法があります。
手順2.不要な契約は、本人が内容を確認して解約する
使っていないサービスがあれば、契約先、更新時期、保存データへの影響を確認してから解約を検討します。必要な契約まで一度に止める必要はありません。
アプリを削除しただけでは、課金が止まらない場合があります。Google Playも、アプリをアンインストールしても定期購入は解約されないと説明しています。契約した事業者や購入経路の正式な解約方法を確認してください。[2]
解約したら、完了の通知や利用終了日を確認し、一覧を更新しましょう。アカウント削除と、有料契約の解約も同じ操作とは限りません。
手順3.残すデータを保存し、開けるか確かめる
大切な写真や文書は、サービスから取り出せるか、保存後に開けるかを確認します。「別の端末でも見えるから、消してよい」とは限りません。
たとえばiCloud写真は、1台で写真や動画を削除すると、利用中のほかのデバイスからも削除されます。同期される仕組みと、別に控えを保存することを分けて考えましょう。[3]
残したいデータのコピーを確認してから整理を進め、共有先にも閲覧方法を伝えておきます。物理的な書類や写真の整理は、生前整理の始め方と片付けの順番も参考にしてください。
手順4.公式の引き継ぎ機能を確認する
AppleやGoogleには、一定の条件のもとでデータの引き継ぎに備える機能があります。スマホ全体や、すべての契約をそのまま引き継げる仕組みではありません。次の章で違いを説明します。
手順5.一覧の存在を伝え、変更時に更新する
一覧を作っても、必要な人が存在を知らなければ活用できません。信頼できる人に、どの範囲を共有するか、必要なときにどう確認するかを伝えます。
機種変更、契約の追加・解約、引き継ぐ相手の変更があったら見直しましょう。整理を終える日を待たず、分かった範囲を残すことが大切です。
iPhoneとGoogleで確認できる引き継ぎ機能
Appleの「故人アカウント管理連絡先」
Apple Accountに保管する対象データについて、自分の死後にアクセスを申請できる人をあらかじめ指定する機能です。Appleの案内では、申請にはアクセスキーと故人の死亡証明書が必要とされています。[4]
ただし、iCloudキーチェーンのパスワード・パスキーなど、アクセスの対象にならない情報があります。設定すれば家族が銀行アプリやすべての契約を使える、という意味ではありません。[4]
対応する環境では、iPhoneの「設定」→自分の名前→「サインインとセキュリティ」→「故人アカウント管理連絡先」から確認できます。利用条件、アクセスキーの共有、対象データはAppleの最新案内で確認しましょう。[4]
Googleの「アカウント無効化管理ツール」
Googleアカウントを一定期間利用しない状態が続いたときに、指定した相手への通知や、選んだデータの共有などに備える機能です。共有先やデータの種類を指定できますが、共有できない情報もあります。[5]
死亡だけを条件に動く機能ではないため、利用しない期間や通知先、共有内容をよく確認してください。Googleのデータ共有設定で、ほかの事業者のサブスクや金融口座の手続きまで済むわけではありません。
設定はGoogleの公式ヘルプから進められます。自分が使っているアカウントに設定しているかも確認しましょう。
ネット口座は、家族のログインで済ませる前提にしない
ネット銀行や証券会社の契約は、金融機関名と正式な問い合わせ先を残すことが基本です。死亡後の扱いは各社の相続手続きに沿って確認します。
たとえば楽天銀行は、口座名義人が亡くなった際には相続手続きが必要で、申し出後に必要書類などを案内すると説明しています。これは同銀行の例であり、必要書類や連絡方法は利用先ごとに確認してください。[6]
暗証番号が分かることと、本人以外が取引できることは同じではありません。「家族がログインして出金・解約すればよい」と決めず、各社に確認する方法を残しておきましょう。
パスワードは、安全な保管と引き継ぎを一緒に考える
国民生活センターは、スマホのロック解除への備えや、ネット上の資産・サブスクに関する情報の整理を勧めています。必要な情報が全く分からない状態を避けることも重要です。[1]
一方、共有用の一覧へ暗証番号や復旧コードをまとめると、紛失や誤送信の影響が大きくなります。この記事では、契約の存在が分かる一覧と、秘密情報を分けて管理する方法を提案します。
- 一覧にはサービス名、用途、問い合わせ先、確認日を残す
- パスワード管理機能など、普段から安全に使える保管方法を検討する
- 必要なときに信頼できる相手が確認する方法を考える
- 公式の引き継ぎ機能は、相手が受け取れたかも確認する
- パスワードや復旧コードを、広い範囲のグループチャットに送らない
端末のロックを外したままにする必要はありません。普段の安全性と、必要時に情報を引き継ぐ方法の両方を考えてください。
書き写して使えるデジタル終活メモ
次の項目を、サービス一つにつき一組ずつ記入します。パスワードそのものは、この記入欄には含めていません。
- サービス・金融機関名:____
- 用途・契約内容:____
- 有料か無料か/請求周期:____
- 契約状況や請求を確認する方法:____
- 公式の問い合わせ・手続きページ:____
- 残したいデータと共有する相手:____
- 解約・保存などの希望と未確認事項:____
- 最終確認日:__年__月__日
記入例:「動画サービスA/映画の視聴/月払い/公式サイトで契約状況を確認/不要になったら解約を希望/更新日は未確認」。金額や手順が分からなければ、調べてから追記しましょう。
よくある質問
家族に見せたくないデータはどうすればよいですか?
共有するデータを選び、私的な記録と分けて管理する方法があります。削除を検討するときも、ほかの人との共有データや、仕事・契約で必要な記録ではないかを確かめてください。公式機能で指定できる範囲と、実際の希望に違いがないかも確認しましょう。
スマホの解約を先に済ませてもよいですか?
電話番号やメールが、ほかのサービスの認証・連絡先に使われている場合があります。本人が契約を整理する際は、関連するサービスやデータを確認してから順番を決めましょう。故人の契約については、携帯電話会社と各サービスへ正式な手続きを確認してください。
有料のサービスを契約しないと準備できませんか?
契約一覧を作る、写真の保存先を確認する、公式の引き継ぎ機能を調べるなど、自分で着手できる作業があります。まずは現在の契約や情報を把握し、追加の支援が必要かを考えましょう。
まとめ|契約3件の一覧から始めよう
デジタル終活は、すべてを消す作業ではありません。何を使っているか、何を残したいか、必要な人がどう確認するかを整理する準備です。
今日は有料サービスを一つ、ネット口座を一つ、写真の保存先を一つ書いてみてください。次に、不要な契約や引き継ぎ機能を確認し、一覧を更新していきましょう。
参考資料
- [1] 国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」
- [2] Google Play「定期購入の解約、一時停止、変更」
- [3] Apple「iPhoneやiPadで写真を削除する」
- [4] Apple「Apple Accountの故人アカウント管理連絡先を追加する方法」
- [5] Google「アカウント無効化管理ツールについて」
- [6] 楽天銀行「相続のお手続き」
資料確認日:2026年10月23日。サービスの画面・利用条件・手続きは変更されることがあります。設定や解約、相続の際は各社の公式案内を確認してください。

コメント